弟がこれだった。
ヤツが中学生に上がる頃には、既に会話が成り立たなくなっていた。
仮定を立てられない人間は、今より先のことを想像できない。
未来は全て仮定だから。
勿論、他人の立場になって考えることも出来ない。
自分の立場を置き換えることは仮定だから。
だから、どの組織、グループ、職場でもトラブルを起こした。
今手許にあるお金を使ってしまったらどうなるか、その程度のことも考えられない。
だから、ギャンブルにハマった。
そして消費者金融に金利を除いても1千万円単位の借金を作った。
仮定を考えられない人間は、他から見れば我儘で享楽的かつ刹那的。
付き合うメリットなど全くない。
赤の他人なら距離を取れば良いだけだが、身内にいると非常に面倒。
弟は四半世紀以上も前に他界したが、もし今も生きていたら、もっと長く生きていたら、ヤツの面倒をみなければならなかった両親の生活は大変だったと思う。
幸いなことに、弟はヤツの収入から考えれば不必要なまでの生命保険を掛けていた。
職場に来た生保のおばちゃんの勧誘に負けたようだ。
ほぼ言われるままに入っていた。
お陰で、消費者金融の借金を全て返して、なお余った。
両親、特に母親は弟の借金を返したがった。
死亡した子の借財を親が肩代わりする必要は法的には一切ない。だが道義的に返済したかったのだろう。
面倒なのは、弟が死亡したことを消費者金融に告げずに返済するために、店頭にボクが連れていかれたことだった。
しかも、現金は母が自分のバックから出すものだから、消費者金融の社員からすればボクが自分の借金を親に返済させるクズ野郎に見えていたコトだろう。
人生最大、ではないが、ナカナカに屈辱的な出来事だった。
兎も角、"仮定"が理解できなければ、人生を棒に振る可能性が幾何級数的に増大する。
そして、そのような人物と関りが深ければ深い程、その不幸に巻き込まれる可能性が増大する。
もし、身近にその様のな輩がいるのであれば、即座に縁を切ることをお勧めする。